砂糖は甘いだけではありません。
砂糖のことをもっと知って、料理を科学してみましょう。
1砂糖とは何か?
砂糖とは植物から取り出されたショ糖(スクロース)を主成分とする甘味物質です。
精製糖や含蜜糖など、砂糖にはいろいろな種類がありますが、すべて同じショ糖が主成分。そしてショ糖は光合成能力を持つ、あらゆる植物中に存在しています。
さとうきびやサトウダイコン(甜菜、ビート)などが砂糖の原料として使われるのは、ショ糖が他の植物よりも多く含まれているため、効率よく砂糖を取り出せるからなのです。
2甘さの違い
砂糖には白砂糖や三温糖、グラニュー糖、そして黒砂糖などいろいろな種類があります。
砂糖の主成分は「ショ糖」と呼ばれる物質ですが、それぞれの砂糖で「甘さ」の感じ方が異なるのはどうしてなのでしょうか?
第一に、ショ糖が分解することで作られる還元糖(ブドウ糖や果糖)の影響が考えられます。 これらの糖の甘さの特徴はおおよそ下記のように表現されます。
- 人間が甘いと感じる物質の中で、クセや嫌味がなく最も好ましい甘さをもつ物質と言われています。その為、甘味の強さ(甘味度)を測る時の基準となっています。
温度の変化にともなう、甘さの変化がありません。 - ショ糖の60~80%の甘さがあります。爽やかな甘さがあります。
- ショ糖の120~150%の甘さがあります。ねっとりとしたコクのある甘さで、低温になると甘さが強くなる性質があります。
砂糖の主成分はショ糖でも、還元糖(果糖やブドウ糖)の分量が多くなることによって甘さの質が変わってきます。
一般名 | ショ糖 | 還元糖 (ブドウ糖、果糖) |
水分 | その他 |
---|---|---|---|---|
グラニュー糖 | 100.00% | 0.00% | 0.00% | 0.00% |
上白糖 | 97.70% | 1.50% | 0.80% | 0.00% |
赤糖 | 93.00% | 3.50% (他の糖類を含む) |
2.50% | 灰分:0.7% タンパク質:0.3% |
加工黒糖 | 90.00% | 5.20% (他の糖類を含む) |
3.00% | 灰分:1.3% タンパク質:0.5% |
黒糖 (黒砂糖) |
80.00% | 9.70% (他の糖類を含む) |
5.00% | 灰分:3.6% タンパク質:1.7% |
表:砂糖の成分値例【引用元:日本食品標準成分表2010、加工黒糖、赤糖は分析結果に基づいた推定値】
他の原因として砂糖に含まれる糖以外の成分、ミネラル分や香気成分、色素成分(ポリフェノールなど)の影響が考えられます。これは、あんこに塩を一つまみ入れると甘さが引き立つのと同じ効果だといわれています。
黒砂糖が白砂糖よりも甘さが強く感じられるのは、黒砂糖に含まれるミネラル分が影響しています。
また、三温糖にコクが感じられるのは、精製時での加熱で生じたカラメルが混じっているからです。
「甘い」と一口に言っても「さっぱりした甘さ」「コクの有る甘さ」「キレのある甘さ」など甘さの質に感じ方が異なるのは、ショ糖以外の成分によって特徴付けられているのです。
また砂糖の結晶の大きさによっても甘さの感じ方は変わってきます。
粉砂糖のような小さな結晶は、口に入れた瞬間から一気に溶けだして、強く甘さを感じますが、氷砂糖のような大きな結晶は、口の中でゆっくりと溶けるので、穏やかな甘さが長く続くことになります。
いろいろな砂糖が持つ「甘さの特徴」を生かして、お菓子やお料理に合わせて使い分けてみてください。
3含蜜糖の表示例
含蜜糖を使った商品への一括表示の原材料表示を行う場合について、それぞれ分類名ごとにご紹介します。ただし、こちらに掲載しているのは一般的な見解であり、最終的にはお客様から消費者庁にお問い合わせください。
加工黒砂糖
加工黒砂糖を使用した商品へ原材料表示を行う場合は、「加工黒糖」と表示いただくことをおすすめしております。
加工黒砂糖は原材料の一部に一定量の黒糖を使用しているため、一括表示の原材料欄に加工黒糖と表示していれば、商品名に黒糖を含む名前をつけることができます(例:黒糖蒸しパン、黒糖クッキー等)。また、 包装・容器に「黒糖使用」や「黒砂糖入り」と表示ができます。ただし、使用量が極端に少ない場合には誤認を与える可能性がありますので、ご注意ください。
赤糖
赤糖を使用した商品へ原材料表示を行う場合は、「赤糖」と表示いただくことをおすすめしております。
素焚糖
素焚糖を使った商品へ食品表示法に義務付けられた原材料表示を行う場合は、「砂糖」もしくは「含蜜糖」と表示いただくことをおすすめしております。
ただし、食品表示基準(食品表示法)では「特色のある原材料」の強調表示として、商品名の併記が認められておりますので、「砂糖(素焚糖)」と表示することも可能です。詳しくは消費者庁にお問い合わせください。
なお、素焚糖は日本標準商品分類(総務省発行)では「その他の含みつ糖」の分類名に該当し、「きび糖」の分類名の記載はありません。
日本黒砂糖協会では加工黒糖等の表示に関するガイドラインを定めています。こちらもご参照ください。
日本黒砂糖協会|表示ガイドライン
4砂糖が白いワケ
砂糖が白く見えるのは雪が白く見えるのと一緒なのです。
グラニュー糖や上白糖の結晶を良く見てください。すると、一粒一粒が透明なことに気が付かれると思います。
砂糖は結晶表面で光が乱反射することによって、白く見えているだけなのです。これは透明な氷の結晶である雪が白く見えるのと同じ原理なのですね。
砂糖に漂白剤…と噂を聞きますが、実際には砂糖に漂白剤は使いません。
活性炭やろ過など、自然で安全な方法を使って純粋な砂糖が作られているのです。安心して召し上がってくださいね。
5褐変反応(かっぺんはんのう)
砂糖を加熱すると茶色くなる。これが褐変反応です。
ショ糖は無色透明な物質ですが、砂糖を長期間保存していて、黄色くなったことはありませんか?この黄色くなる現象のことは褐変反応(メイラード反応)と呼ばれます。
砂糖での代表的な褐変反応は「カラメル化」です。
皆さんは黄金色に輝いたベッコウ飴を御存知ですか?またプリンにはカラメルソース(キャラメルソース)が欠かせませんね。ベッコウ飴やカラメルソースの色は、砂糖を加熱した時にできる色素が基になっています。砂糖には強く加熱するとカラメル化反応を起こし、褐色になるとともに、独特の甘い香りが発生する性質があります。
長期間保管した時など、強く加熱しなくても起こるのは、「メイラード反応」です。
メイラード反応とは、糖とアミノ酸が反応して褐色の色素成分が作られることを指しています。ブドウ糖や果糖はメイラード反応を特に起こしやすい物質で、長期間保管しているとサトウキビ由来の極わずかなアミノ酸と反応して、黄色くなることがあります。
メイラード反応で作られた色素には抗酸化作用があることが知られており、黄色くなってしまったと言っても、食品としては全く問題ありません。黄色くなってしまったお砂糖でも、安心してお使いください (市販のベッコウ飴やカラメルソースには、着色料を使用した製品もあります)。